雨ニモマケテ、風ニモマケテ

カナダ

優しい人に巡り合う日々

6/16 Snag Junction, Yukon Govt. Campground〜Lake Creek Yukon Govt. Campground(走行距離:58.95km)

 キッチンスペースのテーブルから起き上がると、顔に無数の蚊に刺され跡があった。昨日は屋根付きキッチンシェルターで寝る代わりにテントを張れなかったから、肌が露出している顔だけ刺されたのだろう。蚊に刺され程度は大して気にならなくなっていたが、外を見ると土砂降りの雨。これはとてもじゃないけど移動できないなと思い、キッチンスペース内にある立派なストーブで火を焚くことに。着火材もないから以前ヒッチハイクに使ったノートを破りまくり、なんとか火をつけた。幸いにも乾いた薪は小屋に沢山ストックされている。今日はもう一泊ここでステイだなーと思い火をずっと眺めながら暖をとっていると、昨日知り合ったピーターがキャンピングカーからキッチンスペースにやってきた。

キッチンシェルターはかなり立派。
雨で気温も下がるが、ストーブは抜群の暖かさ。

「今日は移動するの?」と聞いてきたので、ステイする旨伝えると、「食料はあるか?」と聞いてきた。一応トックで買ったパンや野菜、米はあるよというと、「なんかあげれるものあるか見てくるから、待ってろ」と言ってキャンピングカーに戻っていった。ピーターはカリフォルニア在住で、今は奥さんと二人でキャンピングカーで旅行中なんだとか。 

ピーターと撮影。とても優しい方だった。
チョコは溶けるしWheatクラッカーはかさばるから持ち歩いてなかったが、
こうしてもらうと非常に嬉しい。

しばらくすると袋を抱えてこちらにやってきた。「荷物にもなるだろうから、いらなものは置いていってもいいし、自由に使ってくれ」とのこと。中身を覗くと食料以外にも油や、ビール、ラム酒、ティーパックまで入っていた。中でも嬉しかったのは調理済みの冷凍チキン。遠慮なく全部いただくことにした。雨だし、人もキャンプ場からいなくなる中、これだけ食料いただけると幸せを感じた。ありがとうピーター。

ピーターに別れを告げるとキャンプ場には誰もいなくなった。電波も届かないし、ひたすらに火を眺め、本を読んでいるとお昼過ぎに別の車がやってきた。ドイツ人観光客を乗せたグループで、ランチ休憩にキッチンシェルターにやってきたのだ。そこでもバナナやリンゴをもらってしまった。これからアラスカに向かうらしいが、国境越えの際、生物の食料を持ち込めないらしい。ずる賢い私は「ひょっとしてここにいればずっと食べ物に困らずに済むかも」とか思ったり思わなかったり。。

 午後2時頃だろうか、あんだけザアザアぶりだった雨が、少し小雨になった。正直ここまでゆっくりしてしまうと動く気にならないのだが、なるべく先に進みたい気持ちも心の奥底であった。ここからさほど遠くない場所に別のキャンプグランドもあるし、悩んだあげく移動することを決意。遅めだが4時頃に出発した。小雨は降っていたが、次第に雨もやみ、問題なく走行できた。3時間ほど進むとキャンプグランドの看板が見えてきた。

Lake Creekキャンプグランド。
ここもユーコン州立キャンプサイトでキッチンシェルターつき。

既に2組のキャンパーがいたが、私と違い彼らも立派なキャンピングカー持ち。アラスカでもそうだったが「家かっ」ってツッコミたくなるくらい立派で、毎回キャンプグランドに行くとテントを張るのは私だけ。笑 キャンプをしていた1組の黒人夫婦、マイクとポーラと少し話をした。エドモンド出身らしく、こちらの方面にあまり来たことがなかったから2週間キャンプしているらしい。彼らから既に火のついた炭をいただき、シェルター内のストーブに放り込んだ。ついでに斧を借りて、いいサイズの薪を作成。火起こしが完了したので、川で水浴びと洗濯をして、シェルターに戻るとまたしても雲行きが怪しくなってきた。するとすぐに土砂降りの雨が降ってきた。

山の天気はコロコロ変化。
たちまち水たまりが池のように広がった。

いいタイミングで移動できたと思いながら、ピーターからもらった鶏肉を野菜と炒めるとこれが最高に美味かった。ビールとラム酒を飲み、ストーブ前で洗濯物を乾かし、昨日に引き続きキッチンシェルターの机で寝た。

暖かいし、シェルター内は天国。

6/17 Lake Creek Yukon Govt. Campground〜Burwash Landing(走行距離:91.52km)

 昨夜は酒を飲んだせいか、夜中に何度か目覚めた。その度に消えかかるストーブに薪を足す作業を繰り返したおかげで朝はゆっくり暖をとることができた。アラスカではもうちょっと頻繁にガソリンスタンドがあったが、カナダ北部は人口も少ないため、あまり物資を調達できない。今日はようやく小さなガソリンスタンドがある街に着く。そう思うと疲れは溜まっていたが、なんだかやる気が出てきた。

 早々に準備を済ませ、いざ出発。最初はいつも通りだったが、なんだか今日は少しアップダウンが多い気がする。目的地のバーウォッシュランディングは湖の近くにあり、湖エリアに近づくと、向かい風が段々強くなってきた。下り坂なのに、向かい風のせいでなかなか進まない。長い一本道を自転車で走っていると、目の錯覚で下り坂に見えても実は上り坂だったりすることはあるのだが、サイクルコンピュターで高度を確認するも、確実に下っていた。さらに湖に近づくと下り坂でもギアを軽くして時速10キロ超ほどしか出ない。

分かりにくいが、草木が横向きに生えている気が。。
サーフィン兼釣りをする私は風速10m/hを予測。
後で調べると風速20m/hだった。そりゃ進まんわ。

「風のばかやろー!止まれー!」と思いっきり怒鳴りながら漕いでみたが、止まるどころかどんどん強くなる。夕方5時頃にやっとの思いで目的地に着くが、街が小さくちょっとショック。唯一のガソリンスタンド兼コンビニに立ち寄り、イートインコーナーでバーガーセットをオーダー。約11ドル(現在1カナダドル=82円程度)だった。疲れていたし腹ペコで物足りなかったしバーガーの値段も妥当っちゃ妥当だったので、値段も見ずに追加でクッキーやパンを買うと。。「ん?クッキーが8ドル?!」田舎の小さな街ほど、物価が高いのだ。足もパンパンで立ち上がる気にならず、高級クッキーを片手にイートインコーナーに長いこと座り込んでいた。

ハーレーに乗った生かした夫婦。本当に優しさに感謝。

そして店にいる人たちと話していると、私の旅の話を聞いた1組の夫婦が店を出る際に近づいてきた。彼らはアラスカ出身で、オートバイの旅をしているらしい。「頑張ってね」と言ってフリーズドライ食品2袋と40アメリカドルを手渡してきた。流石にお金は貰えないと言ったが、そのお札を私の手に強く握らせてくるのである。今日はとんでもなく疲れが溜まっていたし、その優しさに涙が出そうになった。

 野宿スペースを探さないといけないのに、結局店が閉店する8時までダラダラしてしまった。すると店のアルバイトをしているスタッフを迎えに、一人のネイティブアメリカン女性が現れた。アルバイトの子はヘレナという名で、スペインからワーキングホリデーでここにきているのだが、このネイティブアメリカン女性宅に現在ホームステイしているのだ。すると彼女が「ここから車で5分くらいのところに住んでるけど、あなたもうちに来る?」と言ってきたので喜んでお邪魔することにした。

ピックアップトラックの荷台に荷物を全部乗せ、自身も荷台に乗り込もうとした瞬間車が先に発進。危うく置いてきぼりにされそうになったが、無事彼女の家に着いた。

彼女の名前はシャロン。以前は学校の先生で子供達にネイティブ・アメリカンの言葉を教えており、現在はカルチャーセンターなどでちょっとしたワークショップ等を行なっているらしい。「カルチャーエクスチェンジができるからあなたにも声をかけたのよ」と話してくれた。

左の女性がシャロン。
夕食をご馳走になって、ビールももらい、彼女の息子のサムや
他の地域から来ている人たちと焚き火に当たる。
サムに「湖の船のメンテナンスに行くから、一緒に来るか?」
と聞かれ、バギーの後ろに乗りこむ。
サムはハントもするし、屈強な The 山男。
昼間はあんなに風が強かったに、遅い時間に行くと嘘のように静かだった。

 ほろ酔いになった後、約1ヶ月ぶりにベッドに入った。テントに寝袋も悪くないけど、熊に怯えることなく、屋根のある場所でベッドで寝るのって幸せなことなんだなと深く感じた。

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