出会いと別れ
Talkeetna出発
5/31 Talkeetna〜K’esugi Ken Campground (走行距離:86.98km)
昨日、事前にマークと朝別れの挨拶をする約束を8:30amにしていたため、それに合わせて準備を進める。シトシトと降る雨を横目に、レインギアを装着する。今週の予報はずっと雨。これから雨と熊との戦いだ、そんなことを考えていると、8:30過ぎにマークが友人と共に部屋に現れた。「準備は整ったか?」といつもの調子で話しかけてくる。そして彼の友人に、「こいつは自転車でアルゼンチンまで行くんだ。どうせ出来っこないけどな!ガハハハ」と大きく笑った。マークは口もジョークもなかなか悪いが、根は本当に暖かく優しい人だ。
「本当にありがとう。感謝してもしきれないよ」と言うと、
「そうだろうな」とまたジョークを言ってニヤッとした。
そして、本当に最後の別れを告げ、Talketnaを去った。丁度去る頃には雨が上がり始め、丘の上から街を振り返る頃には、太陽の光が雲の隙間から降り注いでいた。
しばらく進み、途中のスーパーで食料を調達。そのスーパーから先は店という店は特になかった。事前にローラに聞いていたキャンプ場に向かう。本当はもう一つ先のキャンプ場に向かうはずであったが、そこは今年の夏はクローズしているとのことだったので、仕方なく手前のキャンプ場に向かった。道中、車は通過するも、何もないため、車が通らなくなると急に静かになる。熊が出ないか不安になり、大声で歌うも、そういう時に限って、誰かが路肩に車を止めて自然を眺めているのであった。
↓キャンプ場情報。Denali State Park内にあり、かなり綺麗。レンジャーステーションもあり、何かあっても安心だ。(水道はあるがシャワーはなかった)
6/1 K’esugi Ken Campground〜Cantwell (走行距離:120.44km)
朝起きると予想外にもテントは濡れておらず、雨が降った形跡もなかった。ラッキーと思いながら、朝食をサクッと済ませ、キャンプ場を出発。しばらくは曇りで問題なく走行できた。しかし坂道がダラダラと続き、ちょっと疲れたなと思い始めた頃には真横にデナリ山含め、雪山が連なるエリアへ。急に空気が冷たく感じられると同時に、徐々に雨が降り始めた。冷気と小雨に打たれながら道路の脇で昼食を済ませるもその頃にはかなり体が冷えていた。気温をチェックすると昼過ぎで4℃だった(体感温度的にはもっと冷たく感じた)。ただ、ここで着込んでしまうと坂道が始まった時に汗をかいて後で余計に寒くなる。かと言って車体が重すぎて頻繁に脱ぎ着をするのも一苦労だ。ここは少し我慢と思いながら、ひたすら漕ぐこと7,8時間。ようやく今日の目的地であるキャントウェル( Cantwell)へ着いた。
街中に入ると潰れそうなガソリンスタンドと、小さなスーパーが。中に入るも商品棚はガラガラ。とりあえずすぐに食べれそうな温かいものを探し、ホットドッグを食べた。
体も冷え切っていたし、この雨の中そこらで野宿するのもな、と思い近くのキャンプ場を探すと、RV Park(キャンピングカーが泊まれる有料のスペース)があった。一泊約20ドル。少し高いとも思ったが、オーナーは優しいし、シャワーも使えるとのこと。ありがたやと思い、すぐに入ることにした。
Alaskaと言ったらDenali
いよいよDenali国立公園へ
6/2 Cantwell〜Denal National Park and Preserve (走行距離:47.96km)
朝6時くらいに起きるも寒くて寝袋から外に出たくない。2度寝、3度寝を繰り返していると、リスがガサガサ動きながら大きな鳴き声で鳴いてくる。『分かったよ、起きるよ。』と内心つぶやきながら、濡れたテントを乾かし片付け、朝食を作る。今日は昨日と違い良い天気だ。次の目的地はそんなに遠くないからね、とゆっくりしていたらなんだかんだ10時になってしまった。
出発するも今日はあっという間に目的地に着いた。すると、流石はデナリ国立公園。街の周りは観光街という感じでCantwellと違い店もしっかりしている。食材を買おうと自転車を止めると、一人の子連れの男が近づいてきて、「これ食えよ。自転車長いこと乗ってるんだろ?カロリー消費で腹減ったろ?」とメキシカンのビーンズと米を2皿くれた。「ありがとう」と言って、親子が座るベンチに一緒に腰掛けた。彼の名前はデニー。ここ周辺に住んでおり、デナリ国立公園で働いるらしい。自転車にもよく乗るのだとか。
「国立公園に行くなら息子と一緒にサイクリングがてら入口の方まで案内するよ」というので、ついていくことに。彼の自転車はファットバイクで雪の中でも進める仕様だ。さらに息子はまだ2歳だが、デニーの乗るファットバイクの後ろに子供用の自転車を連結させて子供を引っ張りながらサイクリングできるようになっていた。彼はデナリ国立公園の仕組みについて、彼の息子は動物の対処法なんかを教えてくれた。2歳児とはいえ、この環境で生活しているだけのことはある。
デニーは、「国立公園内を観光するのは色々なオプションがあるけど、帰りの方が下り坂だから、行きだけ片道分のバスチケットを買って、帰りに自転車に乗ってくるのもありだよ。もし帰り途中疲れたら通りがけのバスにそのまま乗っても、運転手はチケット見やしないし、片道分のチケットだけでも全然平気だぜ?」と言った。
『そんな方法、職員自ら勧めていいのか?』とも思ったが、とりあえず情報収集しようとVisitor Centerへ。ザクっと仕組みを説明すると、公園内は一般車は入れない。色々な種類のバス(ツアーや、ただの移動用のバス、バックカントリー向けのバス等)が常に巡回しており、バス停はもちろん、空席があればハイキング途中でもどこでも拾ってくれるシステムだ。
しかし確かに色々オプションあるけれども、ツアーもバスも結構いい値段するな、と感じてしまった。悩んだあげく、自転車で散々自然を見てるし、道草ばかり食ってるから国立公園はパスして明日には次の街へ行ってしまおうと決断した。
国立公園入口にあるキャンプ場で一泊分の手続きをしていると、一人の自転車乗りらしき人が夕食を作っていた。話しかけてみると、彼は2泊3日で国立公園内を自転車で観光していたらしい。どうだったか聞いてみると
「今の時期に解放されている一番奥にある公園内のキャンプ場にステイしたよ。だいたい30mileかな?そのもっと奥に別のVisitor CenterがあってDenali山がきれいに見えるスポットがあるから行こうと思ったけど、雨に降られてねー。バスチケットは買ってなかったけど、キャンプ場にテントや自転車残して、バスに乗って行っちゃったよ」と。結局彼は、キャンプサイトの金額だけ払ってバスチケットは一切払ってないのだ。
『あれ?これ一番安上がりに、そしてナショナルパークを最大限にエンジョイできる方法かも、、、』と頭によぎる。明日は天気も良いし、職員にもこのグレーな方法を勧められてるし、実際にこの方法を実行した人もおる。。そしてすぐに予定を変更するのであった。
※とはいえ、微妙な方法なのでオススメはしません。もしデナリ国立公園に行く方で同じようなことをしている場合は、自己責任でお願いいたします。
6/3 Denal National Park and Preserve Day 1(走行距離:55.88km)
翌朝、いつものごとくテントをしまっていると、昨日会話した自転車乗りのデイヴィッドも同じくテントをしまっていた。彼はアンカレッジに住んでいるが、今は休みでアラスカ内を自転車旅しているらしい。年齢は40-50くらいだろうか。アウトドアアドベンチャー関連の仕事をしており、何かの自転車コミュニティも運営しているのだとか。恐らく今後モンタナの方を通ることを伝えると、「ここに寄ると良い」と名刺の裏に地名を書いて渡してくれた。親切に色々情報を教えてくれた礼を言って彼とは別れた。
バッテリーに充電を済ませ、いざ国立公園内へ。最初の20kmくらいは舗装路で一般車もここまでは入ることができる。だがこのスタートが中々急な坂で、結構しんどかった。そこをなんとか抜けるとレンジャーステーションがあり、入る許可を得ているか確認された。キャンプグランドを予約していることを伝え、そこからいざ未装路へ。これまたひたすら坂道グラベル。たかが30mileなのに中々到着しない。やっとの思いでキャンプ場に着くと、そこには他に誰もいなかった。
晴天だったのと坂道だったのとで汗だくだったため、シャワーに入りたいと思うも水道はもちろんない。しかしふと横を見ると川が流れているではないか。これは、、、と思った頃にスッポンポンで川の中へ。雪解け水でめちゃくちゃ冷たかったが、天気が良かったので、最高に気持ち良かった。
6/4 Denal National Park and Preserve Day 2(走行距離:0km)
ここ4日自転車に乗っていたし、今日はバスでゆっくり園内を見ようとデイヴィットが実施した通り荷物をキャンプ場に置いてバスを待つ。バスが来たので乗り込むと、たまたま一席だけ空いていた。何もチケットに関することは問われず、簡単に乗り込むことができた。『よし作戦成功』と思いゆっくり外を眺めていると、移動用のバスなのに、動物が現れるたび止まって案内してくれるのだった。リス、ウサギ、ヒツジ、キツネ、カリブー、クマ。いろんな野生動物を見ることができた。
そしてバスに揺られること約2時間半。。。ついに目の前に壮大なDenali山が現れた。頂上は少し雲に覆われていたが、全貌を見れない人の方が多いらしく、非常にラッキーだった。
本当は天気も良いし、ハイキングしたいところだったが、昨日のグラベル走行で足がパンパン。Visitor Centerからも十分に景色を楽しめたので、ベンチに座り込みひたすら山を眺めた。
6/5 Denal National Park and Preserve Day 3(走行距離:55.0km)
早朝5:30に起き、7時前にはIGLOO CREEK CAMPGROUNDを去る。小さいキャンプグランドだったが川の音と鳥の鳴き声が心地良いキャンプサイトだった。帰り道は行きと違って下り坂が多く、あっという間に国立公園入口付近に着いた。ただし、この日は少し雨が降っており、下り坂の風で体がカチカチになっていた。初日にキャンプした場所でシャワーを浴び、大量の食事を済ませ洗濯機を回していると、日本人のカップルが。
話しかけると、こちらのご夫婦、 仕事を辞めてこの一年間、世界をバックパックしており、アラスカを最後にもうすぐ帰国するところらしい。しかも旦那さんは10年前にアラスカからメキシコ手前までチャリダーしていたんだとか。似たような旅人っているもんやなーと思いつつ、更に話していると、僕がチャリ旅に影響を受けた本で石田ゆうすけさん著書の「行かずに死ねるか」を読んで旅を始めたらしいではないか。一気に話が盛り上がり長々と会話してしまった。この先の社会復帰に心配を抱いているようだったが、最後まで旅を楽しんでいただきたいものだ。
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